金星

「ふーん。言っとくけど俺は継がねーよ」


ちょっとした沈黙の後、

普段どおりの口調で、俺は親父にそう言った。


「当たり前だ。お前みたいな生意気な奴に俺の会社はあげられねーよ」


そう言って、親父は笑った。

俺も思わず吹き出した。


「お前がこの前バイトにきたせいで、女子社員がお前に会わせろってうるせーし。仕事に集中しろって渇入れてやったよ」


「あ、そーなん」


それから缶ビールが半分くらいになったところで

残りは自分の部屋で飲もうと、居間を出ようとしたら、


「ちゃんと幸せにしてやれよ」


と親父が呟いた気がした。


「お前に言われなくても分かってるよ」
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