金星
ブレザーのジャケットを脱いだまま屋上に来ると、

曇りがちな天気のためか、少し肌寒かった。


コーヒー買ってくるから先に行ってて、

とタケルに言われ、

誰もいない屋上にたった一人。



あたしは屋上の柵に肘をつきながら、

校舎のまわりに広がるグラウンドを見つめていた。



『俺、人好きになったことないから』



この前潤一が言っていた言葉を思い出す。



昨日の夜から、ヨシヤでいっぱいになりつつあったあたしの頭では、

その意味を理解することができなかった。

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