金星
迷惑さえかけなければ、

親父は俺を自由にしてくれる。


自由にさせてくれるほどのお金もくれる。


「あ、もしもし。亜季? 今から行くわ」


エレベーターで28階から1階に下る間に、

今日の居場所を決めておいた。



一度、親父に結婚はしないのか? と聞いたことがある。


すると、

「俺に近づいてくる女なんて、目がドルマークにしか見えねーんだよ」


そう言って、口からタバコの煙を吐き出した。




そんな俺も、

金目当てで親父に近づいた女から生まれたのか――。


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