金星
俺はその手首をつかみ、

無理やり腕時計をはずした。


「やあっ……見ないで」


そこには、最近つけただろう、

赤い傷が鋭く刻み込まれていた。


「お前なぁ、そーいうのはやめろって言っただろ?」


「だってぇ……寂しかったんだもん」


「はぁ、ちゃんとした彼氏作れよ」


「潤っ……」



――潤一がいい。



無理やり唇で亜季の口をふさいだが、

おそらくそう言いかけたのだろう。


もう、ここに来るのはやめようと思った。


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