金星
「ほら、帰るぞ、酔っ払いが」


丁寧に巻かれたその茶髪のてっぺんを

くしゃくしゃと乱してから、俺は歩きだした。


「え~!?」


そんな俺を、アズミは走って追いかけてくる。


「待ってよ~!!」


そして、また俺の二の腕に絡みついてくる。


「お前、本当は酒強いだろ」

「そんなことないよ~」



この時の俺はまだ――


この様子を後ろからあいつに見られていることに

気がついていなかった。

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