金星
朝、部屋のドア越しに親父の声が聞こえた。
「潤一、今日から出張でしばらく帰らないから、飯代ここ置いておくぞ」
「あぁ」
「そうそう、この前学校から俺に電話があったぞ。
頼むから毎日ちゃんと行けよ。じゃーな」
「あぁ」
――バタン。
これでしばらく自由に家を使える。
や、時々誰かが来るかもだけど。
2人暮らしなのにやたら広いこの家。
整頓された冷蔵庫の中から牛乳を取り出し、
リビングを陣取っている革張りのソファーへ座る。