金星


バンッ――。


乾いた平手の音があたしの頬で弾ける。


「……いったー」


「お前、ナナからヨシヤ奪ってんじゃねーよ!!」


なぜか、あたしは金髪の巻き髪女に胸ぐらをつかまれていた。



何が何だか分からないまま、

ヨシヤの温もりを思い出しながら、

あたしはその痛みに耐えていた。



胸ぐらをつかまれながら見えた体育館裏の景色は、

木々の緑と空の青さでとても美しく思えた。



「何? 意味わかんないんだけど」


思ったことをあたしはそのままつぶやいてしまった。


やっべ。


「口応えしてんじゃねーよ!!」


「……っ!」


そのまま後ろの壁に向かって突き飛ばされた後、

腹に一発けりを食らった。



一瞬、息ができなくなる。




< 65 / 358 >

この作品をシェア

pagetop