金星
バンッ――。
乾いた平手の音があたしの頬で弾ける。
「……いったー」
「お前、ナナからヨシヤ奪ってんじゃねーよ!!」
なぜか、あたしは金髪の巻き髪女に胸ぐらをつかまれていた。
何が何だか分からないまま、
ヨシヤの温もりを思い出しながら、
あたしはその痛みに耐えていた。
胸ぐらをつかまれながら見えた体育館裏の景色は、
木々の緑と空の青さでとても美しく思えた。
「何? 意味わかんないんだけど」
思ったことをあたしはそのままつぶやいてしまった。
やっべ。
「口応えしてんじゃねーよ!!」
「……っ!」
そのまま後ろの壁に向かって突き飛ばされた後、
腹に一発けりを食らった。
一瞬、息ができなくなる。