金星
昼休みのうるさい廊下をとぼとぼと歩き、教室へ戻った。
はぁー、とため息をつきながら、
自分の席にもたれかけるように座る。
まだお腹には蹴られた感触が残っていた。
すると、
「なー、お前ドコモの充電器持ってる?」
と隣の席にいた潤一が話しかけてきた。
「……」
あたしは無言で自分の通学カバンをさぐり、
コードがこんがらがっている充電器を潤一に渡した。
「何、機嫌悪いじゃん。お前またフられたの?」
メタリック調の携帯を充電器に繋ぎながら、
潤一はそう言った。
「……ちげーよ」
潤一にまたバカにされたみたいで、腹が立ちつつも、
放っておいて欲しい気持ちが強かったためか、
あたしは冷静に答えた。
「ふーん。まあ、お前はいつでも本気っつってたしな」
いつもの棒読みのような口調。
「まあね」
「……制服汚れてるぞ」
ちらっ、と潤一は一瞬だけあたしを見た。