金星
少しだけ灰色が混ざった夕方の空。
「そろそろ俺もバイトすっかな~、優奈はしてないの?」
「んー、してないなぁ。あ、でもデート資金ためたいね!」
――え?
いつもの幸せな時間を切り裂くように、
携帯のバイブが制服のポケットで鳴った。
その画面を見た瞬間、時間が止まった気がした。
「……優奈、……ゆーな!」
「……わっ! びっくりしたー」
「どーしたん? 携帯見ながら飛んでたべ?」
「あ、あははっ、お母さんからメールが来てて……テストの点数ばれたみたい」
いつもの帰り道。
マックに少し寄ってから、駅へ向かった。
「じゃーまたなー」
改札前でいつも通りヨシヤはあたしに笑顔を向けた。
あたしも、笑わなきゃ。
「……」
声がうまく出てこない。
「ゆーなぁ、どーしたー?」
「……ヨシヤ、好きだよ」
思わず口から出た言葉。
ヨシヤを見ると、少し驚いた顔をしている。
「ああ、俺もだよ。きーつけて帰れよ~」
ヨシヤはあたしの頭をくしゃくしゃとかき乱してから、
改札を通り抜けて行った。