金星

考えすぎか……。


そう思い、安心して帰ろうとしたが。


――やばい!!


同じ方向へ下っていく大勢の人たちの中に、

アズミが埋もれそうになった時――


「キャッ――!!」


アズミの肩に

誰かの両手が勢いよく放たれた。


ゆっくりと、体のバランスを崩すアズミ。


俺は人と人の隙間をすり抜け、

勢いよく階段を駆け降りた。



「アズミ!!」



そう叫び、俺は細いその二の腕に向かって手を伸ばした。
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