金星

「お前、膝! 血出てるぞ」


「あ、ホントだ! ……っ痛い」


「ちょっと薬局行ってくるし、このへんで待ってろよ」



俺は地下鉄の改札へと下っていく人の方向を見ながら、

アズミと一緒にゆっくり階段を上がっていた。


「え~? 大丈夫だよ~これくらい。

ってかあたし誰かに突き飛ばされたような」



アズミを突き飛ばしたあの人影――。


「……っ!」


俺は急いで携帯電話を取り出し、着信履歴を見た。



「20:45 非通知設定」

「20:43 非通知設定」

「19:11 非通知設定」

「17:23 アズミ」

「17:22 非通知設定」



またかよ。面倒くせーな。

勘弁してくれ――。

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