金星


「あー雨降りそうだよなぁ~」


そう言ってタケルは

タバコの煙を灰色の空に向かって吐き出した。


「お前は本当に平和だよなぁ~」


そう言って俺は

缶コーヒーを飲みながら、屋上の柵にもたれかかった。


この天気のせいか、

屋上にはお弁当を食べている生徒が2、3人いるだけだった。


「何だよ、修羅場かよ潤ちゃ~ん!」


ヘアバンドを片手で整えながら、

ニヤニヤと俺を見るタケル。


「あー! その呼び方やめろっ」


思わずコーヒーを吹きそうになった。


「別に修羅場とかそーいうのじゃなくて、何かめんどくせーだけだし」


床に水滴が落ちる。

雨が降ってきたようだ。


タケルはタバコをもみ消し、

俺が飲んだコーヒーの缶にそれを放った。


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