金星
午後からは雨がひどくなり、

パラパラと水滴が地面を叩きつける音が外から聞こえてきた。


そんな中行われる数学の授業はまるで呪文のようだった。



「(xの2乗マイナス9)2乗……これを因数分解すると」



まわりのクラスメイトが黒板を凝視して必死にペンを動かしている中、

俺は必死に眠気と戦っていた。



まだ隣の席には、誰もいない。


キーンコーンカーンコーン


「きりーつ」


ガタガタと椅子と床が擦れる音が各教室から響く。


やっと数学が終わった、そう思っていると。


ブー、ブー。


胸ポケットに入れていた携帯のバイブが勢いよく鳴った。


「非通知設定」


――来た。


「れーい」

ありがとうございました。


授業終りの挨拶が終わる直前に、

俺は急いで携帯の通話ボタンを押し、教室から出た。

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