金星
「……おい」


「…………」


通話中になっているのに、

電話の奥からは何も聞こえない。


「何とか言えよ」


「…………」


教室から少しずつ生徒が漏れてきている廊下。

雨のせいか、いつもより暗い。


「……はぁ」


「…………」



おもむろに俺はため息をついたが、

相変わらず受話器越しには何の音も聞こえない。



俺は携帯を耳にあてたまま廊下を進み、

屋上の入り口前の階段に向かっていた。

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