金星
「何してんだよ」


その目は、赤く腫れていた。


泣いていたのだろう。


「いや~ 屋上で昼寝してたらいつの間にか雨ふっちゃっててさ~」


「……」


「早く教室戻んなよ、授業始まっちゃうよ」


少し引きつった笑顔を俺に向ける優奈。

早く俺にここから立ち去って欲しいようだ。



でも――


「ほら、これでも着てろよ」


さすがに寒そうだったため、

俺はシャツの上に来ていたカーディガンを優奈にかぶせた。


「……あ、ありがと」


「ま、ヨシヤ氏だっけ? フラれたからってそんなヘコむなよ、じゃーな」


「は? ふられてねーし!!」

という声が後ろから聞こえてきたが、

あいつも何だか大変そうだな~。

そんなことを思いながら俺は教室に戻った。
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