金星

きりーつ。れーい。

さようならー。


バラバラの声たち、ガタガタと鳴る椅子の音と、

心待ちにしていた放課後のチャイムの音。


今日はヨシヤと一緒に帰れる。



「おーい潤一、ゆっくりタバコ吸えるスポット見つけたし付き合えよ」

「あー、今日はわりぃ」

「おろろ? デート?」

「まーな」


右隣から潤一とタケルの会話が聞こえてくる。

潤一は今日も女遊びに忙しいようだ。


「そっかー、じゃー優奈ちゃん行かない? 一人じゃ寂しいっぺよ~」


その会話があたしに向いてきたので、

「え? ごめぇーん、今日は」

と上目遣いと高めの声とで断っておいた。


「だよねーそーだよねーヨシヤっちとデートだよねー、あー俺も彼女ほすぃ~」


そう言っているタケルを横目に、

鼻歌を歌いながらヨシヤの教室へ向かった。
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