Bitter or Sweet?
そんなとき。
一気に飲み干してしまったカルーアミルクの入っていたグラスを掲げて
私がもう一杯カルーアミルクを店員さんに頼むと、
先生もまたウィスキーを頼んだ。
「・・・食べ物、食べた?」
「え、あ、はい」
思えば、あまり食べてなかった。
先生は私より少し離れた場所にあったビザののった皿を渡してくれる。
そこからピザをとって自分のお皿の上にのせていると、
先生は大きなお皿を戻しながら、また私の方を向いた。
そう、それは突然だった。
「いつも耳にしているピアス、可愛いね」
「・・・へ!?あ、こ、これですか!?」
私は思わず両耳の耳たぶをおさえた。
冷たい金属の感触。
依然、美衣がプレゼントで買ってくれた、小さな星形のピアスだった。
「そう。たまに同じピアスしている人見かけるけど、流行っているの?」
先生は、はにかむ様に笑いながら、私に気怠そうな視線を向けた。
それが、私の視線とぶつかる。
その時、一瞬だけ、時間が止まったような気がした。
はにかむような、控えめの笑顔。
気怠そうな視線。
柔らかそうな髪。
知性を増幅させる黒淵の眼鏡。
何かがヤバい。
私の頭の中で、何かを知らせるサイレンが鳴り響いた。