双子月
ホットケーキが程良くキツネ色になった頃、玄関のチャイムが鳴った。
「いらっしゃい!」
朋香は満面の笑みで光弘を迎えた。
「おっはよ。
お、この匂いはホットケーキじゃん。
やりぃ♪」
朋香の頬に軽くkissをして、光弘はあがり込んだ。
「ちょうど今出来上がったんだよ。
お昼にしよ。」
光弘は同じ心理学専攻で、大学1年生の夏から付き合い始めた。
朋香も光弘も特にお互いを気にしていた訳ではなかったのだが、ある事をきっかけに距離が近付いたのだ。
薬を服用し始めた頃、まだ血中濃度が安定しておらず、朋香はよく頭痛と吐き気と目眩を起こしていた。
加えて夏の暑さで、朋香は通学途中の坂道で座り込んでしまった。
そこに通りかかったのが光弘…という訳だ。
当時は美穂にも心療内科に通っている事を話しておらず、独り胸の中に抱えていた。
心も身体も限界の悲鳴を上げかけていた時だったので、朋香は泣きながら光弘に事情を話したのだ。
光弘は朋香を背負って大学の保健室に連れて行きながら、黙って頷いていた。
おでこに当ててくれた光弘の手は冷たくて気持ち良く、朋香の心に触れた光弘の心は暖かかった。
その後、光弘は「心身共に支えてあげたい」という落とし文句で、朋香をゲットした。
光弘も光弘なりに考え、悩んだ。
この気持ちは朋香の事を”好き”だからではなく、”病気”を放っておけないからではないのか。
自分の中の偽善の心を満たす、自己満足の気持ちではないのだろうか。
しかし、目の前の小さな女性が何かに縋ろうとしている。
手を差し伸べてあげたい。
今はこの気持ちが何から湧き出て来るのか分からないけれど、2人で育んでいければ良いと光弘は想った。
その後、朋香は光弘に背中を押してもらい、美穂にも心療内科に通っているという事を打ち明ける事が出来たのだ。
光弘も美穂も、朋香にとって大学で得た、かけがえのない存在である。
「いらっしゃい!」
朋香は満面の笑みで光弘を迎えた。
「おっはよ。
お、この匂いはホットケーキじゃん。
やりぃ♪」
朋香の頬に軽くkissをして、光弘はあがり込んだ。
「ちょうど今出来上がったんだよ。
お昼にしよ。」
光弘は同じ心理学専攻で、大学1年生の夏から付き合い始めた。
朋香も光弘も特にお互いを気にしていた訳ではなかったのだが、ある事をきっかけに距離が近付いたのだ。
薬を服用し始めた頃、まだ血中濃度が安定しておらず、朋香はよく頭痛と吐き気と目眩を起こしていた。
加えて夏の暑さで、朋香は通学途中の坂道で座り込んでしまった。
そこに通りかかったのが光弘…という訳だ。
当時は美穂にも心療内科に通っている事を話しておらず、独り胸の中に抱えていた。
心も身体も限界の悲鳴を上げかけていた時だったので、朋香は泣きながら光弘に事情を話したのだ。
光弘は朋香を背負って大学の保健室に連れて行きながら、黙って頷いていた。
おでこに当ててくれた光弘の手は冷たくて気持ち良く、朋香の心に触れた光弘の心は暖かかった。
その後、光弘は「心身共に支えてあげたい」という落とし文句で、朋香をゲットした。
光弘も光弘なりに考え、悩んだ。
この気持ちは朋香の事を”好き”だからではなく、”病気”を放っておけないからではないのか。
自分の中の偽善の心を満たす、自己満足の気持ちではないのだろうか。
しかし、目の前の小さな女性が何かに縋ろうとしている。
手を差し伸べてあげたい。
今はこの気持ちが何から湧き出て来るのか分からないけれど、2人で育んでいければ良いと光弘は想った。
その後、朋香は光弘に背中を押してもらい、美穂にも心療内科に通っているという事を打ち明ける事が出来たのだ。
光弘も美穂も、朋香にとって大学で得た、かけがえのない存在である。