双子月

3…片月 ~雫~

「え、文通ですか?」


朋香は自分でも奇妙だと思う声を上げた。


水曜の朝1番。

今日は布団から這い出る事が出来たので、待たされる事もなく診察室に入った。


先週1週間は大したトラブルもなく、気分的にも落ち着いていると話した矢先、林先生がいきなり切り出したのだ。


「そう。
このクリニックに土曜の夜、時々来る女の子がいるんだよね。
朋香ちゃんと同じ歳なんだけどさ。
その子に朋香ちゃんの事を話したら、ぜひ文通したいって。
直接会ったら?って勧めたんだけど、照れ屋さんなんだよ。」


と林先生が笑う。


「私のコト話したって、何をですか?」


「あ、勝手にごめんね?
気を悪くした?」




別に嫌なコトや困るコトがあるワケでもない。


相変わらず、個人情報はどうでもイイんかぃ…とは思うが、慣れ親しんだクリニックだ、構いはしない。


ただ、一平凡な患者である自分の何を聞いて、何に興味を持って文通などと言い出しているのか、単純に疑問に思っただけである。


「ん~、同じ歳の友達が少ない子なんだよ。
ここに通っているからには、まぁそれなりの事情がある訳なんだけど。
ちょっと難しいっていうか、珍しい病気なんだよね。」


「…と言うと?」


「僕も彼女に朋香ちゃんの病名とかは話してないよ。
そこはやっぱり、1番のプライバシーの部分でしょ。
そういう、お互い、なかなか他人に言えない事情を共有している者同士、文通とかしてみるのも良いんじゃないかと思って。
最初はただの世間話とかで良いんじゃないかな?
友達とメールをするような感覚で。
そのうち、お互いの病気とかの根深い部分を話せるようになったら、それが1つの気分転換というか、少しは気が楽になるんじゃないかな。
どうだい?」


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