双子月
事実と向き合う決心をした瑠璃子を見て、朋香は左手のセーターをめくりながら皆に手首を見せた。


無数の斬り傷の痕。

瑠璃子と真朝は驚いた。


「朋香、これって…」


朋香は美穂の方を見た。

美穂は黙って頷いた。



「実は私、心療内科に通っているの。
美穂と光弘しか知らない。
この間来てた林先生は、高校の時の担任なんかじゃなくて、クリニックの先生なの。
今まで2人には黙っててごめん…」


「え、心療内科って…
朋香、どこか悪いの?」


真朝が心配気に聞く。


「うん…基本的に睡眠障害なんだ。
ただ、弟と逢えなくなった時くらいから鬱みたいな症状も出て、気分障害や過呼吸も併発するようになった。
気が付くと、こうやってリストカットもしてる…」


朋香はセーターを元に戻した。


そういえば、朋香は夏でも薄手の長袖を羽織っている。


「瑠璃子、もし辛い結果になったとしても、私みたいに壊れないで。
一言、私に言って?
どうしても辛くなった時は、クリニックを紹介するから。
きっと明日の結果がどっちに転んでも、瑠璃子は胸を痛めると想うの。
約束だよ、自分を責めすぎたりしないで。」


朋香は一生懸命に訴えた。

それが瑠璃子の心に静かに響いた。


「朋香、話してくれてありがとう。」


瑠璃子の口から自然とお礼の言葉が出てきた。



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