双子月
「やっぱり僕には、家族を捨てる事は出来ない。
世間体とかじゃないんだ。
何回考えても、瑠璃ちゃんと天秤にかけたら釣り合っている。
そのくらい大切な家族を、僕の身勝手で苦しめる訳にはいかないんだ。」


瑠璃子は声が震えないよう、裏返らないよう、充分に気を付けて、


「えぇ、分かるわ…」


と答えた。


どれだけの労力を使ってこの言葉を搾り出したか、自分でも分からない。

雄一の左手の薬指の指輪が勝ち誇っているように見えて仕方ない。



そう、元々、最初から分かっていた事だ。


いけない恋だと…

許されない恋だと…


雄一さんは元通り、愛する家族が待つ家に帰る。

私は大学に行き、友達と思いっきり遊んで、就職して結婚相手を探す。

それが普通なんだ。



「瑠璃ちゃん…これからも辛い想いをするかもしれない。
だけど、矛盾しているけど、僕が絶対にそんな想いはさせない。」


「え…?」


瑠璃子が気付いた時には、瑠璃子の右手の薬指に、ピンクトルマリンの石が付いた指輪がはめられていた。



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