双子月
瑠璃子はゆっくりと雄一の腕から抜け出して、改めて向き合った。


雄一の方が涙ぐんだ顔をしている。



愛しい人。

泣かないで。

貴方の気持ちは充分に伝わったのだから。



瑠璃子は雄一のおでこに唇をそっと当てた。

今度は瑠璃子が雄一を抱きしめた。

それはまるで、聖母が御子を慈しむかのようだった。

朝日がスイートルームのカーテンの隙間から差し込む。



新しい朝が来たのだ。

2人は手を繋いで、部屋を出た。



少し遅めのブランチを昨夜のレストランでとった。


右手の薬指のピンクトルマリンが、陽の光を反射してキラキラ揺れる。



瑠璃子は、吸い込まれるようにその光を見つめる。

雄一は、吸い込まれるようにそんな瑠璃子を見つめる。



目を合わせては、はにかんで照れ笑いをする2人。

幸せの絶頂。

雄一が会計を済ませて、車をホテルの入り口まで回してきた。

瑠璃子は黙って助手席に乗った。



「ごめんね、バタバタして。
また夜、連絡するから。」

と瑠璃子の家の前に着いた時、雄一は言った。



すると、珍しく瑠璃子から雄一にkissをした。

雄一は驚いたけれど嬉しくて、深く深くとろけるようなkissを返した。



その時だった。



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