双子月

8…灰となった廃人

火曜の夜。

昼食も夕食も断って部屋に引き篭もり、ベッドの中にいた。


さすがに親が心配していたが、具合いが悪いからと嘘を付いた。

まぁ、あながち嘘でもない。

今だに勝手に溢れ出てくる涙。


一体この体内にどれ位、これだけの涙用の水分が貯められていたのか。

あまりにも泣きすぎて、何が原因で泣いているのかが想い出せない。


ただ、何となく大切なモノを失った感覚が残っている。

自分から突き放した気がする。


(あぁ、そうだわ、雄一さんと別れたんだった…)


瑠璃子はやっと想い出した。


そして携帯を取って、黙々とロングメールを打ち始めた。

仲良しの3人に事の結末だけでも知らせなくちゃ…と思ったのだ。


送信して気が抜けていたところに、メール着信音が鳴った。

朋香からだった。


『瑠璃子、大丈夫?
1日中、泣いていたんじゃない?
ご飯は食べた?
今日は眠れそう?』


何で分かるんだろう。


1日中、泣いていた。
ご飯は食べていない。
疲れてはいるけど眠れそうにない。


寝たら悪夢に足を引っ張られそうで。


『無理みたい、私、生きていけないかも…
自分で決めた事なのに…』

と朋香に返信をすると、またすぐに返事が来た。


『私、明日、診察日だから、良ければ瑠璃子を紹介するよ?
こういうのはプロに任せた方がイイから…
特に…変な気を起こす前に…ね?』


『ありがとう、じゃあ、お願いするね…』


と瑠璃子は返事を返した。

変な気って何だろう?



真っ紅な左手首と真っ紅に染まったシーツを見ながら、瑠璃子はボンヤリと不思議に思った。


チキチキチキ…

カッターの刃を出したり閉まったりする音だけが部屋に響いていた。



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