双子月
瑠璃子の母親は勝手が分からなかったので、朋香に任せた。

朋香が受付で、いつもの仲良し看護師に、


「急患の中川瑠璃子です。」


と声をかけると、待合室でお待ちくださいと、すぐに通してもらえた。


最初に問診表を渡された。

瑠璃子はボンヤリとそれを見つめていた。


”最近、眠れない事が多い”
”急に不安に襲われる事がある”


などの似たような質問が3枚に渡ってあった。

0、1、2の、三段階評価で付ける。

けれど、今の瑠璃子にそれらを自己評価する能力はない。



時間をかけて段々と気分が堕ちていく場合と違って、急も急な事だ。

ガタ堕ち。

そうとしか言いようがなかった。



林先生に名前を呼ばれたので、瑠璃子はふらりと立ち上がって診察室に入って行った。


すると5分も経たないうちに、林先生が診察室のドアを開けて、

「朋香ちゃん、瑠璃子ちゃんは今、状況を上手く説明出来ないみたいだから、代わりに詳細を教えてもらえないかな?」

と、朋香に声をかけた。


「あ、はい!」

とコートを腕にかけて診察室に入った。


いつもは自分が診察を受ける立場なのに、そこには瑠璃子が座っている。

何だか変な感じだ。

ともかく、朋香は自分の知る限りの事を林先生に話した。





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