双子月
「へぇ、自分だけサッパリしたんだ?」


朋香の心臓が大きく音を立てた。

ベッドの上に光弘が座っている。


「み、光弘、何で…」


朋香は困惑を隠しきれなかった。


「何で…はこっちの台詞なんだけど。
自分から今日ここに来ないかと誘っておきながら、昨夜から一向に電話に出ない。
さっきここに着いて、チャイムを何回も押したけど出て来ない。
鍵が開いてたから、勝手に入らせてもらったけど。」


光弘は朋香から目を逸らして、冷たく答えた。



そうだ…。


昨日は瑠璃子の件で、午後からもクリニックに行っていたので、携帯はバイブのままバッグの中だ。

昨夜はボンヤリしていて、鍵を閉め忘れていたのかもしれない。

シャワーを浴びていたからチャイムも聞こえなかった。



朋香はそれらを説明しようとしたが、どれも言い訳がましくて言えなかった。

それでも、隠していたって黙っていたって、何も進まない。



朋香は昨日から今までの流れを光弘に説明した。

もちろん、瑠璃子の事も。



最初は関心無さ気に聞いていた光弘も、さすがに瑠璃子の今回の件を知って驚いた。


「瑠璃子がそんな…
…そうだったのか…」


「うん…」


朋香も想い出す度に胸が痛む。



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