双子月
すると、光弘が唐突に言った。


「…で、朋香は?」


「…え?」


朋香は、光弘が何を言いたいのか分からなかった。


「瑠璃子がクリニックに通わなければならなくなった原因は分かった。
じゃあ、朋香は?
朋香は何でクリニックに通い始めたの?」


光弘が冷たい目線を朋香に向ける。


「ど、どうしたの、急に…」


「急にじゃない!」


光弘が声を荒げた。

朋香が泣きそうな顔になるのを承知で。


「俺は、時間をかけても良いと想っていたんだ。
朋香が話そうって気持ちになるまで待とうって。
睡眠障害なら、薬に頼るしかないから俺は見守るしか出来ないって。
でも、”何で”睡眠障害になった?
俺には言えないのか?
病気の現状だけを心配してたって、原因が分からなきゃ、知らない間に朋香を傷付けてしまう事だってあるかもしれないだろ!?」



光弘は一気にまくし立てて、呼吸が乱れていた。


朋香は今まで見た事も聞いた事もない、知らない男性が目の前にいるような恐怖に駆られた。



隠していたつもりはない。

光弘が本音では知りたがっていたのも分かっていた。

ただ朋香自身も、上手く説明出来るか、自信がなかった訳で。



バスタオル1枚では、もう身体も心も隠しきれないと朋香は思った。



ふらつく足で棚に並べていたアルバムを取り出して、語り始めた。



「…全てはココから始まったの…」



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