双子月
…朋香の頭の中はクエスチョンマークだらけだ。



…待って、まず…智也?
林先生のコトを名前で、しかも呼び捨てにしてるの?

…そして何より…私のコトを知っている?


私は『雫』なんて、”運命”なんて知らないわよ!



思わず口に出して叫びそうになるのを、何とか飲み込んだ。


コレは…2人に相談すべきなのか?

それ以前に、全くもって、この『雫』という人間が分からない。


林先生に聞くという手もあるが、『雫』は林先生を”智也”と呼び捨てにしている。

どういう関係なのか疑ってしまう。

聞く事さえ躊躇ってしまう。


(…気持ち悪い…頭の中が混乱しすぎてグラグラする…)


とりあえず最後まで読んでみようと思い、再び便箋に視線を落とす。

便箋を持つ手が、僅かながら震えている。


『朋香、私は自分のコトを他人に知られるのがあまり好きじゃないの。
病気持ちの貴女ならこの気持ち、少なからず分かってくれるわよね?
特に私のケースは珍しく、私には智也以外、相談する人も悩みを打ち明けられる人もいないの。
だから朋香、貴女が羨ましくてたまらない。
ねぇ、お願いよ。
私は貴女のコトを知っているけれど、貴女は私の存在すら知らない。
知って欲しいの。
私という人間がこの世にいるっていうコトを、知って、認めて、想ってちょうだい』


ずきん…と胸の奥が痛むのを朋香は感じた。


疑問はたくさんあるけれど、とりあえず、自分1人の胸に秘めておこう。

そして、『雫』を知るコトから始めよう、そう思った。



< 15 / 287 >

この作品をシェア

pagetop