双子月
すると、


「分かってるよ、そんなの!
どうせ俺の心が狭いんだよ!
勝ち誇ったように、朋香の事を1番知っているみたいな言い方をされて…
先生だとか関係ない…
俺が1番朋香の事を知っていたいのに、朋香は俺には話さず、あいつには話すんだ!
そうだよ、単なる嫉妬だよ、悪いか!」


光弘は背中を丸めて顔を覆いながら、漏らすようにそう叫んだ。


朋香は驚きのあまり、どうしたら良いか分からなかった。



光弘がそんなふうに想っていたなんて…



自分が『光弘は全て分かってくれている』と、都合の良いように扱っていた事に、今更気付いた。



「光弘…」



と朋香が光弘の肩に手を置こうとした瞬間、朋香の視線の先が急に天井に切り替わった。


光弘が朋香をベッドの上に倒し、その上に覆い被さったのだ。



「みつひ…」



ビックリしている朋香の口を、光弘は塞いだ。


光弘の唇が熱い。

だけど、喋りまくったせいか、口の中は乾いている。


まだ濡れたままの朋香の髪を、光弘は撫でた。

朋香は、光弘の背中に手を回した。

すると光弘は、朋香のバスタオルの上半身部分を少しだけめくって、唇を近付けた。



ガリッ



「痛っ…!」



朋香は思わず光弘を突き飛ばした。



(何…?)



光弘は、


「こんな事が出来るのは俺だけだからな!
あいつの及ばない、俺だけの権利だ!」


そう言うと、自分のコートを掴んで、朋香の家から駆け出して行った。



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