双子月
入学式後3日間は、ほとんどオリエンテーションで楽だった。


サークルに顔を出したかったが、喉の痛みが耳の下の方にも移ってきたような感じがしたので、光弘は無理をせずに、もう1度病院に行く事にした。


病院に入る前に、ダンボールを覗きに中庭に行った。


中の子猫は冷たかった。

綺麗な桜の花びらが、子猫の上に降りかかっている。



光弘は頭がクラクラしていたので、そのまま受付をして診察を受けた。

次は扁桃腺が腫れていると言われた。

熱が出ている。


(あぁ、だから頭がクラクラするんだ…
あぁ、だから、あの子猫が冷たく感じたんだ…)


やっと納得したように光弘は薬をもらい、帰って寝ようと思った。


その時、あの女性がダンボールを見下ろして立っているのが見えた。


光弘は慌てて中庭に出た。

近くまで寄って、光弘はギョッとした。


ピンク色の桜。

赤い、紅い、この花びらは…?


その女性はあの子猫の片足を掴んで、自分の目の前にぶら下げていた。

何も反応しない子猫を見て、女性は不思議そうな顔をしていた。



ガリッ ガリッ



女性は子猫の顔を引っ掻く。



あぁ、赤い、紅い、これは…血だ。



誰の?

子猫の?


…この女性の?




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