双子月

2…痕・夏・愛

金曜の朝。


朋香は冬休みだというのに、6時には目を覚まして目玉焼きを焼いていた。

クロワッサンとココアと一緒に朝食を済ませ、洗濯機を回し始めた。



ふと洗面所の鏡に映る自分の姿を見た。


上に着ていたトレーナーの襟元をぐぃっと下げて、左胸を鏡に映した。



まだクッキリと残っている光弘の痕。

心臓を喰いちぎって持って行こうとした痕。


それは残酷な程の痛みと傷痕だったが、朋香には、自分は光弘のモノだという、焦げ付いた焼印のように甘い誓いの傷痕に想えた。



朋香は1日でも1分でも1秒でも早く、光弘と仲直りをしたい気持ちでいっぱいだった。

何度考えたって、光弘以外に今の自分に必要な人はいない。



通が全てだった頃もあった。

通は、自分がこんな病気を抱えているとは知らないだろう。

もう連絡が取れなくなって、1年と半年以上経つ。


通が大事な気持ちは変わらない。

通が大事に想ってくれている気持ちも変わらないだろう。




ただ、朋香は知ってしまった。


あの頃は”親”という存在に支えられての、2人きりの世界だった。

自分達2人でさえいれば何も怖くないと想っていたのも、実は、バックに”親”がいたからだ。



でも今は違う。

確かにまだ成人もしていないし、経済的な面の一部は”親”の手を借りている。


しかし、自分達の足で道を選んで立って、自分達の意思で数多の人の中から選んだ相手の手を取り、自分達の気持ちを育みながら一緒にいる。


そんな相手と巡り逢えた。



< 162 / 287 >

この作品をシェア

pagetop