双子月
『こんな病気の女、面倒くさい』


と想われたらどうしよう。

だけど強がって隠していた結果が、今回の光弘の不満の爆発だ。



光弘は何で私を選んだ?

あの夏、あの坂、あの汗、あの涙。

私は何で光弘を選んだ?



2人共、夏の暑さに、蜃気楼のような幻の魔法をかけられたのだろうか。

始まった時、その時、そこに”愛”はあった?


あの時助けてくれたのが光弘じゃなく他の人だったら、私はその人を選んでいた?

あの時助けたのが私じゃなく他の人だったら、光弘はその人を選んでいた?



誰かが言っていた。


『苦しい時に傍にいて優しくしてもらえるのは普通の事…
大事なのは普段から優しくしてくれるかどうかという事…
そうでなければ続かない』



その言葉通りだとしても。

苦しみに対する優しさから始まった事だとしても。


私達は毎日、お互いを見つめ合っている。

私の調子がイイ時も悪い時も。



ちゃんと続いている。

そう、2人で育んだ長い長い時間がそれを証明している。


ただ1つの問題を放置していただけで、向き合うタイミングを見計らっていただけで、こんなにも本音で語り合いたいと想えるのは、大切に想っているからに他ならない。



私の本音は、病気を言い訳に光弘に本音でぶつかってこなかったコト。

いつか捨てられるのでは…という、今心配しても仕方ない不安に駆られていたコト。

光弘の愛情を、間違った尺度で受け止めていたコト。



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