双子月
そう、朋香は走り出していた。

何故自分が走っているのか分からない。



さっき見たものは何?



あぁ、考えなければならないコトがたくさんだ…

あぁ、でも考えないコトがこんなに楽だなんて知らなかった…



だけど、世の中のルールなんて身体に染み付いているモノだから。

歩行者用信号の青色がチカチカしている。



確か、その間はまだ横断歩道を渡っても大丈夫なはずだ。



うん、ほら、大丈夫。

無事に渡りきった。




何?

何か向こう岸から声がする。




「朋香、待って、違うの!
ごめんなさい!」




あれは…友達の瑠璃子?

何で私の名前を叫んで謝りながら、一生懸命こっちに走って来るの?




「危ない…!」




周りの人が叫ぶ。



今までに聞いたコトのないようなタイヤの擦れる音。
今までに嗅いだコトのないようなタイヤの焦げる匂い。




キキィー


ドン



「きゃぁー!」


「誰か救急車を、早く!」




どうしたの?

事故が起こったの?

大丈夫かしら?



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