双子月
「と…もか…」


その時、やっと朋香は正気に戻った。


目の前で起こった事故。

歩行者信号は赤なのに、駆け寄ってきたのは……瑠璃子!



「瑠璃子、瑠璃子!!」



朋香は走り寄った。



「君、近寄らないで、すぐに救急車が来るから!」

「違うんです、私の友達が、友達が…」



そう言って、車体の奥から見える腕の方に回り込んだ。

その腕に近付くにつれて、血の沼が広がっていく。



「るり…」



そう言って恐々と覗き込み、その現場を目の当たりにした時、朋香は息が止まりそうだった。


「いた…」


瑠璃子は声を出しながら起き上がろうとする。

でも自分が何かに包まれているようで、重たくて上手く起き上がれない。



「みつ…ひ…ろ…?」



朋香は膝の力が完全に抜けて、血の沼に座り込んでしまった。



このいっぱいに広がる血は。

頭から流れ出ている血は。

瑠璃子を庇って頭から血を出しているのは。




『と…もか…』




さっき、自分の名前を呼んで正気に戻してくれたのは。

今日、仲直りの為の喧嘩をする約束だったのは。



他でもない、ここに倒れ込んでいる光弘だった。





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