双子月
「瑠璃子ちゃんも分かるよね?
自分だけの問題ではないという事。
君達はとても複雑な事情を抱えている人間の集まりだから、一筋縄では上手くいかない。

本当はゆっくりと時間をかけて紐をほどいていくべきなんだろうけど、それぞれの問題が正面からぶつかり合っている今が1番の正念場なんだ。
僕達が後ろで手を広げて、いつでも倒れて込んでくるのを支えられるように待っているから、思いっきりぶつかり合っておいで。」


と、次は瑠璃子に向かって言った。


「そう…
私達は少しずつすれ違っていって、気付かないうちにそれがいつの間にか大きな溝になっていた…。
ぶつかり合う事から逃げていた…。
今なら…今しかないんです。」


と、瑠璃子の声が少しずつ力強くなっていった。


「うん、そうだね。
じゃあ、行こうか。
僕からも皆に大事な話がある。
根本的にその話を大前提として知らないと、こじれたままになってしまうだろう。
ではお母さん、後はこの子達に任せましょう。
どうぞ落ち着いて、ゆっくりされていてください。」


そう言って、瑠璃子を連れて病室を出て行った。




同じ頃、光弘もMRIとCTの検査が終わっていた。


「大丈夫です、頭部や内臓などに損傷はありませんよ。
後は右足のリハビリを頑張りましょうね。」


と、主治医がプリントされたフィルムを見ながら言った。



良かったね、と言い合いながら、両親に車椅子を押してもらい病室に戻る途中、

「父さん、お願いがあるんだけど…」

と、光弘が父親に話をもちかけた。


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