双子月
林総合病院精神科。


入院して1週間が経った。

その間に心理テストを2つ受けた。


自分も春から心理学専攻なので、多少興味はあった。

精神科病棟にはいろんな人がいたけれど、朋香はほとんどの時間を1人で過ごした。



(どうせ1ヶ月位の入院だって言ってたし、他の人と仲良くなる必要はないわ)



今日は入院担当主治医と一緒に、林クリニックに診察を受けに行く日だった。


朋香の入院担当主治医は林先生の従兄弟で、まだ若い。

主治医はクリニックに着いて、心理検査の結果のプリントを林先生に渡した。



まず林先生は朋香と、入院生活に不自由はないかなどの世間話を軽くした。


「朋香ちゃん、君には弟がいたね?」


林先生は家族の話を持ち出した。



「はい、離婚してパパに引き取られたけど、私達すごく仲がイイんです。
通って言うんだけど、あの子ったら、私の大学合格記念の食事をほったらかして以来、連絡もしてこなければ、入院のお見舞いにも来ないんですよ。」


と朋香は愚痴った。


「ねぇ、朋香ちゃん。
通君はね、この前、交通事故で亡くなったんだよ。」


林先生はズバリと言った。


「…先生、何言ってるの?
通が死んだなんて、おかしくて笑っちゃう…」



朋香はクスクス笑い出した。

しばらく笑っていたけれど、段々、朋香の顔から表情が消えた。



「通…ドコ…紅い血…白と黒の…アレは…何…?」




そう呟く朋香の肩を、林先生がポンと強く叩いて言った。


「出ておいで!」



すると朋香の顔に表情が戻ってきた。

戻ってきたのだけれど、何か雰囲気が違う。



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