双子月
「ふふ、『朋香』ったら、また逃げたのね。
通の死を認めきれなくて、想い出しそうになったら『私』になすり付けて自分は眠ってしまうんだもの。
ズルイ女。」
と、朋香の口からそんな台詞が飛び出した。
入院担当主治医はビックリして林先生に言った。
「兄さん、これって…」
「僕も始めは一種の記憶喪失かと思っていたけど…。
ご両親の話を聞いた時から薄々考えていたんだ。
朋香ちゃん、いや、『君』は『朋香ちゃん』じゃないね…?」
そう尋ねられた『朋香』の身体は嘲いながら言った。
「そう、『この子』ったら、通の葬式の時、雨に打たれながら意識を失ったの。
その時に『私』は初めて呼ばれたわ。
『朋香』が表なら『私』は裏。
『朋香』が白なら『私』は黒。
『朋香』が自分を保つ為に犠牲にされたのが『私』ってワケ。
『私』は『朋香』のコトを知っているけれど、『朋香』は『私』のコトを知らないのよ。
無意識に『私』を産み出したんだから。
でも、知っている方が何かと有利よね。
『私』の方が『朋香』より、よっぽどこの身体で世の中を生きていける自信があるわ。
この格好が気に喰わないけれど。
髪は真っ黒でロングストレートがイイわ、服も真っ黒で。
どう、素敵でしょ?」
”解離性同一性障害”
いわゆる多重人格障害。
有名なところでは“ビリー・ミリガン”という実在する男性が、24人の人格を持っていたという話などがある。
その主たる原因は、幼い頃の虐待によるモノが多いというが、朋香の場合、最愛の弟を目の前で失ってしまったという耐え難い現実から逃げたいが為に、新たに1人の人格を自分の中に目覚めさせたのである。
「そうだね、『君』の方が立場は強いかもしれない。
だけど、この子は今までの18年間を、『朋香』として過ごしてきたんだ。
『君』がこの子を乗っ取ってしまうと周りも混乱するし、何より『君』自身が1番辛い目に遭うと思う。
周りは『朋香ちゃん』を主人格として認めて求めるから。」
林先生は言った。
通の死を認めきれなくて、想い出しそうになったら『私』になすり付けて自分は眠ってしまうんだもの。
ズルイ女。」
と、朋香の口からそんな台詞が飛び出した。
入院担当主治医はビックリして林先生に言った。
「兄さん、これって…」
「僕も始めは一種の記憶喪失かと思っていたけど…。
ご両親の話を聞いた時から薄々考えていたんだ。
朋香ちゃん、いや、『君』は『朋香ちゃん』じゃないね…?」
そう尋ねられた『朋香』の身体は嘲いながら言った。
「そう、『この子』ったら、通の葬式の時、雨に打たれながら意識を失ったの。
その時に『私』は初めて呼ばれたわ。
『朋香』が表なら『私』は裏。
『朋香』が白なら『私』は黒。
『朋香』が自分を保つ為に犠牲にされたのが『私』ってワケ。
『私』は『朋香』のコトを知っているけれど、『朋香』は『私』のコトを知らないのよ。
無意識に『私』を産み出したんだから。
でも、知っている方が何かと有利よね。
『私』の方が『朋香』より、よっぽどこの身体で世の中を生きていける自信があるわ。
この格好が気に喰わないけれど。
髪は真っ黒でロングストレートがイイわ、服も真っ黒で。
どう、素敵でしょ?」
”解離性同一性障害”
いわゆる多重人格障害。
有名なところでは“ビリー・ミリガン”という実在する男性が、24人の人格を持っていたという話などがある。
その主たる原因は、幼い頃の虐待によるモノが多いというが、朋香の場合、最愛の弟を目の前で失ってしまったという耐え難い現実から逃げたいが為に、新たに1人の人格を自分の中に目覚めさせたのである。
「そうだね、『君』の方が立場は強いかもしれない。
だけど、この子は今までの18年間を、『朋香』として過ごしてきたんだ。
『君』がこの子を乗っ取ってしまうと周りも混乱するし、何より『君』自身が1番辛い目に遭うと思う。
周りは『朋香ちゃん』を主人格として認めて求めるから。」
林先生は言った。