双子月
「光弘君は数日中に右足のリハビリが始まる。
瑠璃子ちゃんは様子見で、数日は整形外科に入院してもらうね。
でも基本的に僕の診察が中心だから。
雫は今日中に整形外科から精神科に移って、しばらく入院してもうう。」


次は智也が話をまとめた。


「え~、入院?
やだぁ、せっかく『朋香』が出て来る気配がないから、智也と一緒にいられるのに~」

と雫が駄々をこねた。


さっきまでの鋭さと残酷さはどこにいったのか、甘え媚びた女に見えた。


「雫、ワガママを言うなら閉鎖病棟にするよ?」

智也が少し強めに言ったので、


「はぁい。」

と雫は、むくれながらも返事をした。



そして、ちょうど夕食の時間になったので、解散する事になった。


「衝撃的な話を聞かされて、頭も気持ちも整理出来ていないと思う。
だけど、僕が言った注意点だけは守って。
それ以外では、自分達の思うように行動してみれば良い。
1つずつ解決していかなくちゃいけない事だからね。
何かあれば、僕にいつでも質問や相談をしに来て良いから。
じゃあ、明日は日曜だし僕もまた来るから、皆も気を付けて帰りなさい。」


と、智也は言って、皆を光弘の病室から出した。



最後に自分が部屋を出る時になり、くるっと振り返って、


「悔しいかい?
でも全ては君にかかっていると言っても良い。
『朋香ちゃん』の事も『雫』の事も、前に言ったように本気なら、受け入れてぶつかり合っていく事だ。
憎まれ役なら僕がいくらでも買うから。」


と、微かな柔らかい笑いを含めて光弘に言い、ドアを閉めた。



緩やかな静寂。



光弘は、誰もいなくなった病室の窓から空を見上げた。


(あぁ、明日は新月か…)


学園祭の半月から1週間、もう見えるか見えないか程の月の欠片。



『朋香』と『雫』という2人の存在が明らかになった。

2つの欠片が明るみになったのに、足して満月にならないのは何故だろう。

どうして今日に限って新月へと…消えゆくのだろう。



…そこに…”君達”はいる…?



ここからまた満ちてゆくはずの月を見て、光弘は言いようのない不安を覚えた。



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