双子月
黒髪が陽に透けて、キラキラ反射する。
大輔はそれに魅せられてしまい、
「髪、綺麗だな…」
と自分でも気付かないうちに口にしていた。
雫はクッキーを食べていた手を一瞬止めて、ありがとうとニッコリ笑った。
「あの、さ、『雫』…は、何で”黒”が好きなの?」
まだ『雫』と呼ぶのに慣れていない大輔は、突っかかりながら質問した。
雫は首を傾げて考えたフリをして、
「だって”黒”が1番強いでしょ。
どんな色も混ぜていけば、最終的に”黒”になる。
どんなに綺麗な色でも、”黒”の上では、その存在も掻き消されてしまう。
絶対的なのよ。」
またクッキーを食べ始めた。
「でも朋香…あ、『雫』は肌が白いから、”黒”がくっきり映えるな。
そういう意味では『雫』の”白”も強いんじゃないか?」
と大輔は思ったままの事を言った。
それが雫のお気に召したのか召さなかったのか、雫は、ふぅんとだけ言って、黙々とクッキーを食べ続けた。
1分の沈黙が1時間にも感じた。
大輔はもうこの場から立ち去りたい気持ちでいっぱいだった。
何か話題を…そうだ!
「あ、光弘だけど、さっき病室に行ってきたら、もう明日にはリハビリ始められそうだってさ。
光弘はまだ車椅子だから自由に動けないけど、『雫』は動けるんだから逢いに行ってやれよ!」
と大輔は意気揚々と話した。
すると、今度こそ雫は、完全にクッキーを食べるのを止めてしまった。
そして両手で顔を覆い、下を向いた。
「ちょ、どうしたんだよ、泣いてるのか?」
大輔が慌てて雫の肩に手を置いた。
「光弘は…『朋香』を…
『私』を許さないわ…
今まで黙っていたコト、美穂とのコト、そして何より智也とのコト…」
泣き声を絞り出すかのように、雫がポツリと胸の内を明かす。
「そんなの、仕方ないじゃんか、誰のせいでもないよ。
それに光弘は、そんなに心が狭い奴じゃないって事、お前が1番分かってるだろ?」
大輔は一生懸命フォローする。
「ダメなの、『私』が『私』を許せない。
きっと『朋香』もそうだわ。
もう、光弘とは…」
首を振る雫をとにかく落ち着かせようとして、大輔は雫の両肩に置いた手に力を入れて、
「俺がちゃんと2人の間を取り持ってやるから。
俺もお前も、光弘とはもう付き合い長いんだか…」
と力説している途中で言葉が途切れた。
大輔はそれに魅せられてしまい、
「髪、綺麗だな…」
と自分でも気付かないうちに口にしていた。
雫はクッキーを食べていた手を一瞬止めて、ありがとうとニッコリ笑った。
「あの、さ、『雫』…は、何で”黒”が好きなの?」
まだ『雫』と呼ぶのに慣れていない大輔は、突っかかりながら質問した。
雫は首を傾げて考えたフリをして、
「だって”黒”が1番強いでしょ。
どんな色も混ぜていけば、最終的に”黒”になる。
どんなに綺麗な色でも、”黒”の上では、その存在も掻き消されてしまう。
絶対的なのよ。」
またクッキーを食べ始めた。
「でも朋香…あ、『雫』は肌が白いから、”黒”がくっきり映えるな。
そういう意味では『雫』の”白”も強いんじゃないか?」
と大輔は思ったままの事を言った。
それが雫のお気に召したのか召さなかったのか、雫は、ふぅんとだけ言って、黙々とクッキーを食べ続けた。
1分の沈黙が1時間にも感じた。
大輔はもうこの場から立ち去りたい気持ちでいっぱいだった。
何か話題を…そうだ!
「あ、光弘だけど、さっき病室に行ってきたら、もう明日にはリハビリ始められそうだってさ。
光弘はまだ車椅子だから自由に動けないけど、『雫』は動けるんだから逢いに行ってやれよ!」
と大輔は意気揚々と話した。
すると、今度こそ雫は、完全にクッキーを食べるのを止めてしまった。
そして両手で顔を覆い、下を向いた。
「ちょ、どうしたんだよ、泣いてるのか?」
大輔が慌てて雫の肩に手を置いた。
「光弘は…『朋香』を…
『私』を許さないわ…
今まで黙っていたコト、美穂とのコト、そして何より智也とのコト…」
泣き声を絞り出すかのように、雫がポツリと胸の内を明かす。
「そんなの、仕方ないじゃんか、誰のせいでもないよ。
それに光弘は、そんなに心が狭い奴じゃないって事、お前が1番分かってるだろ?」
大輔は一生懸命フォローする。
「ダメなの、『私』が『私』を許せない。
きっと『朋香』もそうだわ。
もう、光弘とは…」
首を振る雫をとにかく落ち着かせようとして、大輔は雫の両肩に置いた手に力を入れて、
「俺がちゃんと2人の間を取り持ってやるから。
俺もお前も、光弘とはもう付き合い長いんだか…」
と力説している途中で言葉が途切れた。