双子月
自分でも何で言葉が続かなかったのか分からなかった。


この状況は…?


引っ張られている。

胸ぐらを掴まれている。

座っていた椅子が、ガシャンと音を立てて倒れる。

雫の両肩に置いていたはずの自分の手は、今やベッドの布団に圧力をかけている。


この柔らかい唇の感触は…


(半年前に別れたあいつより全然柔らかい…)


雫の唇に応えながら、大輔は全く別の事を考えていた。

雫が5度目のkissを仕掛けようとした時、大輔はやっと我に返った。


「…なっ…?」


大輔は雫から反射的に離れようとしたが、雫が仰向けになって大輔の首に腕を回していたので、逃れられなかった。


「ねぇ、大輔…
光弘を忘れたいの…
お願いよ…」


そう言うと、今度は少し強引に5度目のkissを奪った。


「忘れるなんて…そんな簡単に出来るのかよ?
それに誰でも良いって訳じゃないだろ?
都合良く光弘の友達の俺を使うなんて、朋香らしくない!」


と、大輔は息を切らして反論した。


すると、

「何言ってるの?
『朋香』らしくないって…
『私』は『雫』だもの。
でもそうね、誰でもイイってワケじゃないかな。
光弘の親友である大輔だからこそ、意味があるのよ。
最高の仕返しで、最低の裏切りでしょ?」

と雫は当然のように言った。


(狂ってる…)



大輔はそう想いながらも、もう雫の呪縛から逃げ出せなかった。



< 204 / 287 >

この作品をシェア

pagetop