双子月
昼食後。


雫は売店の自動販売機でホットココアを買って自分の病室に戻ろうとしていた時に、誰かが病室の前に立っている事に気付いた。


「あ、雫!」


ノックしようとしていた手を雫に向かって大きく振ったのは真朝だった。

隣には剛もいる。


雫は剛に軽くお辞儀をして、病室のドアを開けて2人を入れた。


真朝は真朝なりに考えた結果、『雫』は『雫』だと想う事にした。

変な遠慮や気兼ねは逆に『雫』を逆撫でするのではないか。


自分が実際にこういう状況だったら…なんて本当は想像も付かないけれど、無理矢理想像してみる事で、真朝らしく振舞う事にした。

剛にも十分説明をして、理解してもらおうと努めた。


「食後だから軽くデザートが良いかなぁと思って、奮発して風味堂のイチゴ大福買ってきたよ。
『雫』もこれ、好きかなぁ?」


ガサガサと袋から、イチゴ大福を3つ取り出した。


「あぁ、美穂が好きな風味堂のヤツね。
私もイチゴ大福好きよ、ありがとう。
でも皆、食べ物のお見舞いばかりで、私、太っちゃう。」

雫はクスクス笑った。


雫が笑ってくれた事で、2人はやっと緊張が解けて安心出来た。

これなら大丈夫。


「あ、飲み物は冷たいお茶がソコの冷蔵庫に入ってるだけなんだけど、温かい方がイイなら売店で買ってくるわよ?」


と雫が2人に尋ねたら、2人共お茶で良いと言ったので、紙コップに注いで渡した。


雫はホットココアのプルタブを開けて、3人でイチゴ大福を食べながら軽く話した。



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