双子月
「イイや、自己紹介にしとこ…」


先に自分のコトをさらけ出しておかないと、いきなり相手のコトを聞くのは失礼だと思った。

まぁ、雫の1回目の手紙は、そういう意味では、かなり失礼なのかもしれないが…。


心療内科に通っているのだ、何か事情があるのかもしれない。

聞きたいコトは山程ある。


しかし、そう思って、自分の事を書き出した。


『はじめまして。
雫は私のコトを知ってると言ったけど、私は分かんないの。
もしかしたら、本当は知っていて忘れているだけかもしれない。
それだと失礼だね。
まずは謝らせて。
そして、雫がどの程度、私のコトを知っているか分からないから、今日は自分のコトを書こうと思います』


前置きを書くと、あとはスラスラと手が進んだ。


大学で心理学を専攻しているコト・サークルは美術関係で水彩画を描くのが好きなコト・光弘と美穂達3人のコト。


そして、忘れてはいけないのは、何故林クリニックに通っているかという事だ。


『睡眠障害と、軽度の気分障害』


そこで朋香の手は止まった。


何かを忘れている気がする。

だけど思い出せない。

だから気にしない。


自分に言い聞かせて一気に手紙を書き上げた。


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