双子月
【Dear 瑠璃子】

貴女には1番辛い想いをさせたでしょう
病気の私達は、同じような病気の人間を探し出しては、卑屈になる
”私の方が辛いのに”
貴女と『私達』は、どっちが辛かった?
月にかざすと瑠璃色に光るあの石
『私達』の上に貴女が重なる
貴女に覆われて『私達』は瑠璃色のドームの中で眠る
起こさないで
起こさないで
”今”辛いのは貴女だろうから、『私達』を忘れて”今”を生きて
…何てイジワルを言えるのは、貴女にだけ





「診察に行ってくるね。」


首元で、プラチナのチェーンに通したムーンストーンの指輪が揺れる。

瑠璃子はその指輪を握り締めて、駅への道を歩いて行った。






< 234 / 287 >

この作品をシェア

pagetop