双子月
「光弘!」


講義室の移動中に、美穂が光弘の名前を呼んで駆け寄って来た。


「美穂、どうしたんだよ?」


息を切らしながら、美穂はバッグの中を漁っている。

そして1つの封筒を取り出した。


「これ…
『雫』の遺品を昨日久々に取り出してたら、『朋香』のが混ざっていたみたいなの…」

と光弘に渡した。



表には何も書かれていないが、裏を見ると、

『200×・12・25』

と書かれていた。



「これって…」


「そう、『朋香』はクリスマスの前に入院してそのまま亡くなったから、自分のアパートには戻っていなかったでしょ。
まだ『雫』が出てきたり、事故やいろんな事が起こる前に、貴方に宛てて書いたクリスマスカードなのよ。」


美穂が説明した。

光弘の胸が高鳴る。



「…きっと、光弘に伝えたかった事が…
『朋香』の最期の心の内が書いてあると思うわ。」


美穂はそう微笑んで光弘の肩を軽く叩くと、真朝が待つ方へ戻っていった。



(『朋香』の…
喧嘩中に書いた『朋香』の気持ち…)



「大輔、俺、次の授業抜けるから代返よろしく!」

「え、ちょ、光弘!?」


自分の用件だけ伝えて、光弘は急いで走り出した。




講義棟の屋上。


今日も程良く晴れていて、心地良い風が吹いている。



光弘は仰向けに寝転がり、先程の封筒を両手で持ち、上に掲げた。



例によって青空の中に昼間の月。

今日は満月に近い。


光弘は丁寧にシールを剥がして、中身を取り出した。

いかにも朋香が好きそうな、可愛らしいクリスマスカードだった。



二つ折りのカードを開くと、

『真っ赤なお鼻の~トナカイさんは~♪』

と、オルゴール調で流れてきた。




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