双子月
そう、タイミングが少しズレただけだった。


あの日、去年の秋。

ちょうど良い気候に誘われて、瑠璃子は1人で買い物に出かけていた。

秋物の洋服を買おうと街へ繰り出したのだが、運悪く、ガラの悪い男2人に捕まってしまった。


「大丈夫だって。
ちょっとアンケートに答えてチャチャっとエステっぽいのをするだけだから。
痛くも痒くもないし、何てったってタダだよ~」


「そうそう、だから少しでいいからさ、俺らに付き合ってよ~」


瑠璃子は男達の言葉を信じていた。


本当は着いて行きたくなんかない。

だけど、この人達もお仕事でこうして人を集めなければいけないんだろう。



ちょっと見た目は怖い人達だけど、着いて行ってあげた方が良いのかな…



「ちょっとだけなら…」と承諾しかけたその時だった。



通りかかった雄一が、「待たせてごめんね」と、とっさに嘘を付いて瑠璃子の腕を引っ張りながら、足早に男達から遠ざかった。


角を曲がった所で雄一は手を離し、


「ごめんね、腕、痛くなかったかい?
あぁいうのを信じて引っかかっちゃ駄目だよ…」


息を切らせながらそう言う雄一に、瑠璃子は不思議な感情を抱いた。


左手の薬指に、まだ真新しい銀色の指輪をはめている事に気付いていたが、言わずにはいられなかった。


「お礼に、お茶でもご馳走させて下さい…!」


こうして2人の関係は始まったのだった。


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