双子月
左手首の包帯をほどいてみる。


古い傷の上に、まだ新しい傷痕。

うっすら血が滲み出ていた跡がある。


右手で傷をちょっと引っ掻いてみると、やはり血が出てきた。


(何で私は斬るんだろう…)


朋香はふと思った。


当然、深く斬れば失血死する可能性だって十分にある。

しかし朋香の左手首は、ためらい傷ばかりだ。


無意識にやっているとは言え、死ぬ気はないらしい。

自分で「ないらしい」と言うのも変な話だが。


血を見て生きている事を確認する為だとか、よく聞くけれど、無意識のうちに確認したって、朋香にはただの傷しか残らない。

ボンヤリと血が滲み出てくる様子を眺めていた時、フッと後ろから人影がかかった。


「何やってんの?」


と光弘が覗き込んできたのだ。

朋香はちょっと驚きながらも安心した。


「ううん、ちょっとね。
光弘と私って釣り合ってるのかなぁって考えてたの。」



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