双子月
第2章*月達の交錯

1…報われぬ恋には月の影

「おお、ロミオ、ロミオ。」

ジュリエットは言った。

「どうして貴方はロミオなの?
私を想うなら、貴方の御父上を捨てて、貴方の性をお拒み下さい。
もしそうなさらないなら、私への愛を誓って下さいまし。
そうすれば、私はキャピュレット家の者でなくなりましょう。」


ロミオは言った。

「もし貴女が、ロミオという名前がお気に召さないのなら、もう僕はロミオではない、愛人とでも何とでも好きなように呼んでくれ。」


ジュリエットは言った。

「貴方への振る舞いは、普通の女性に比べて分別ある行為だとは言えませんが、慎重と見えても偽りであったり、遠慮と見えても小細工に過ぎない多くの人達よりは、私の方がずっと誠実な恋人である事を証明致しましょう。」


ロミオは言った。

「こんな立派な婦人に、不名誉の陰さえも負わせるなどとは思いもよらない。」


そしてロミオは天に誓おうとするが、ジュリエットはそれを拒む。


聖書に戒められているからだ。

『汝ら みだりに天に向かって誓うなかれ』

と。




この”天”を”月”に見立てる事がある。

姿形が移ろい変わりゆく不安定な月には、変わらぬ愛を誓えないと。


2人の甘い蜜のような会話が成されたバルコニーを照らし、その甘い密談に耳を傾けていたのは”月”だけだったというのに…。



月が彼らを悲劇へと導いたのか

月だけが彼らの悲劇を優しく見届けたのか


今宵も月は黙って想いを馳せているだけ



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