双子月
1人暮らしのアパートの1階。

美穂が通っている大学から程良く近い。


豪勢な家に住んでいる美穂からしたら、とてもこんな小さな家で1人暮らしは出来ないだろう。


美穂はしばらく、玄関の前で立ち竦んでいた。

こんなにも緊張するのはいつ以来だろう。

しかし、いつまでもここに立っていたって仕方ない。


寒空の下、かじかんできた指でチャイムを押すと、中から小さな声で「誰?」と返事があった。


「美穂です。
入れて頂けますか?」


と答えると、少し間が空いて、


「あぁ、突然でごめんなさい。
本当に来てくれたのね。」


と、先程の電話の主と同じ声がした。


ゆっくりと玄関のドアが開き、美穂は中に招き入れられた。




美穂はその女性を見てビックリした。

ずっと気になっていた人そのモノだったから。


まさか、このタイミングで現れるとは。


数週間前、初めて逢った日と同じ。


流れるような黒髪。

洋服さえもやはり黒を纏っている。


だけれども、だけれども。

いや、やはり分からない。




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