双子月
「ヤバイ、ヤバイよ!
ビッグニュース!!」

真朝が朝っぱらからハイテンションに言う。


大学1年の秋。

そろそろ上着を1枚増やそうかどうか悩む季節。

朝は冷え込むので着てくるが、昼はまだ暖かいので邪魔になる、そんな季節。


真朝のニュースが、この場をホットにしてくれるのか、更に冷え込みを増すだけなのか、気になってしまう3人。


「何、次はどうしたの?
また格好イイ人でもいた?」

朋香が言うと、

「彼氏がいる朋香には関係nothing!
ねぇねぇ、美穂、瑠璃子、合コン行くよ!」


…行こうと誘うのではなく、行くよと強引なのが、さすが真朝だ。


「え~、合コン~…?」

美穂が渋る。


「良いじゃん、美穂も瑠璃子も彼氏いないし。
朋香も、光弘に飽きたんなら参加しても良いよ♪」


「ほ~、言いたい事を言ってくれるじゃないか、真朝。」


いつの間にか、真朝の背後に光弘が立っていた。

顔は笑っているものの、怒りのオーラを見事に纏っている。


「も、もちろん、冗談でございます…」


真朝の変わり身の早さに、一同笑いが起こる。


しかし真朝にとって、次の瞬間には、そんな事はもう何処吹く風。

「相手はね、何と社会人なんだよ~。
私の中学の時の友達が社会人と付き合ってて、その人の同僚3人とセッティングしてくれたんだ~!」


「イイじゃん、合コンくらい行ってみなよ。
別に絶対付き合わなきゃとかじゃないんだしさ。」

部外者の朋香は軽く言う。


「ね、3人で彼氏ゲットしようよ~。
朋香にばっか良い想いさせたくないし!
今が1番遊び時の大学生だよ?
彼氏くらい欲しいじゃんか~!」


妙に力説する。


「でも、私は夜遅いの駄目だし…」


と美穂が言うと、日曜の昼間にしてもらってるから大丈夫と真朝がフォローを入れる。


「ね、瑠璃子も行くでしょ?
彼氏いないし、ちょうど良いじゃん!」


実はこの時点で、瑠璃子は既に雄一と付き合っていた。

例の出逢いからまだ2週間。

1番、気持ちが盛り上っている時だ。


しかし不倫関係にあったので、もちろん秘密にしており、付き合っている人はいない事になっている。


心の中で「雄一さん、ごめんなさい」と想いながらも、怪しまれないように、

「分かった、参加するよ。」

と瑠璃子は承諾した。


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