双子月
「じゃじゃ~ん!」


先に着替え終わった真朝が出て来た。


ばっちり王子様、ロミオだ。

真朝は短髪だから、カツラは要らないだろう。


あまりに男前すぎてどう誉めて良いか分からないが、とりあえず本人は気に入ったようで、自慢気にクルクル回ってマントを見せびらかしたりしている。

少し遅れて瑠璃子が出て来た。


「へ…変かなぁ…?」


皆の視線をもろに感じて、顔が赤くなってしまっている。

変だなんてとんでもない、見惚れてしまう程、良く似合っている。


ただ、瑠璃子は茶色に髪を染めていて、そこまで長くもないので、黒髪の長いカツラが必要だ。


そのような小道具は、演劇サークル部員が用意している。

さっそく被せてみると、どこから見ても平安時代のお姫様。

かぐや姫だ。



「すごーい。
瑠璃子ってこうして見ると、日本美って顔立ちしてるね~!」


調子に乗った真朝が膝まづき、瑠璃子の手を取って、甲に軽くkissをする。


「お姫様、ワルツを1曲、お相手頂けませんか?」


瑠璃子もその気になったようで、


「あら、気が利かない方ね。
この召し物でワルツが踊れるとでも思って?」

と冗談で返す。


皆がキャッキャと騒いでいる中、美穂は、瑠璃子の長い黒髪に、吸い込まれるように魅せられていた。


そう、美穂の想い人を想い出させる。

長くて黒いその髪に触りたい。

雫の本物の気品に触れたい。


そして同じく皆と騒いでいる朋香を見て、


(やっぱり…)


美穂は1人胸の中で呟いた。

心臓の高鳴りを抑えながら…。



< 48 / 287 >

この作品をシェア

pagetop