双子月
ただ、朋香と通には誤算があった。

2人共、父親の方に引き取られるのだろうと思っていたが、違ったのだ。


男の子には男親

女の子には女親


まだまだ発育途中の子供なので、そっちの方が何かとやっていきやすいだろうという事で、朋香は母親に、通は父親に引き取られる事となる。



もちろん、そんなモノは子供達に対する建前で、裏には大人の事情があった。


「溝口TOY・コーポレーション」は通の祖父が会長を務め、父親が社長を務めている。


溝口家では、当然のように通が更にその跡を継ぐ事になっていた。

なので、溝口側が通を手放さないのは、両親共に仕方のない事だと思っていた部分もある。


けれど、本当は子供達に自由に選ばせたかった。

通にも、無理に会社を継がせる気はない。


しかし、社会的に体裁が悪い事をしてしまったという、溝口側に対しての罪悪感も多少あり、半ば通を生贄にする形で納得せざるを得なかった。


問題は朋香の方だ。

パパっ子で、更に通まで溝口家に残るとなれば、朋香は正直そちらに付いて行きたかった。


母親と見知らぬ男との、今までとは違う生活…。

母親が1人になるのは可哀想だと想ったが、自分から相手の男を選んだのだから、その人さえいれば満足なのではないか。


揺れ動く朋香の心。

しかし、最終的に、朋香は母親に引き取られる。



溝口家の言い分は、『不倫などと恥知らぬ事をする女の娘は、同じような過ちを犯しかねない』との事。


今まで初孫として散々可愛がってきた朋香を、溝口家はそのような理由であっさり捨てた。


しかし、そんな事はどうでもいい。

朋香にとっては、通と離れ離れになった事が何よりも1番のダメージだった。


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